電気工事業の実務経験①では、建設業許可の専任技術者になるための実務経験についてまとめましたが、電気工事業の実務経験②では、「第1種電気工事士」になるための実務経験についてまとめます。
- 実務経験についての注意事項とは?
- 第―種電気工事士免状を取得するのに必要な実務経験とは?
- 実務経験として認められる電気工事
- 実務経験としては認められない電気工事
- 電気工事士法に定められた軽微な工事とは?
- 電気工事士法に定められた軽微な作業とは?
1.実務経験についての注意事項とは?
電気工事業の専任技術者になるためには、第2種電気工事士は免状の交付後3年の実務経験が必要ですが、第1種電気工事士免状の交付を受けた者であれば、実務経験なしでなることができます。
(知事許可に限る。)
そのため、「3年の実務経験を積むのであれば第1種電気工事士の資格を取ってしまったほうが早いのではないか?」と考える方もいらっしゃるかと思います。
しかし、第2種電気工事士免状の交付を受けた者が第1種電気工事士免状の交付を受けるためには、試験に合格するとともに、5年以上の実務経験が必要となります。
そもそも、電気工事業を始めるために第2種電気工事士の資格を取ったとしても、実務経験や他の資格がなければ電気工事業の登録・通知を行うことができません。(詳しくは電気工事業の実務経験①)
また、電気工事に関連する工事を行っていても、実務経験として認められないものがあるので注意が必要です。
この実務経験は、現在勤務している登録・通知電気工事業者の代表者や、以前勤めていた登録・通知電気工事業者の代表者に証明してもらうことになりますので、独立をお考えの方は退職の仕方にも注意しなければなりません。
ご相談いただくお客様にもいらっしゃるのですが、「実務経験はあるけど以前勤めていた会社に協力してもらえないような辞め方をしてしまった。」とのことで、建設業許可取得を断念、または先延ばしになってしまったことも何度かあります。
このような注意事項をよく理解し、確実に実務経験を積んで資格取得を目指しましょう。
2.第―種電気工事士免状を取得するのに必要な実務経験とは?
- 第一種電気工事士試験合格の場合、5年以上
-
大学、高等専門学校の電気工学課程の卒業者の場合は、卒業後3年以上の実務経験期間に短縮されます。
※ ただし、電気理論、電気計測、電気機器、電気材料、送配電、製図(配線図を含むものに限る)および電気法規を修得していることが必要です。
- 職業能力開発校を卒業した場合は対象外です。
- 電気主任技術者免状取得者の場合、免状交付日以降5年以上
- 昭和62年以前に実施されていた高圧電気工事技術者試験合格者の場合、試験合格通知日以降3年以上
なお、いずれの場合も第1種電気工事士試験合格以前の実務経験も対象になりますので、合格時にすでに第二種電気工事士として上記1の実務経験を満たしていれば、すぐにでも都道府県知事に申請することができます。
※ 第1種電気工事士試験合格者の場合、電気工作物の維持・管理・運用業務は実務経験とならないので注意が必要です。
3.実務経験として認められる電気工事
第1種電気工事士になるために認められる実務経験は、以下のものになります。
- 電気主任技術者の監督・指導のもとでの、500kw以上の自家用電気工作物の工事
- 第二種電気工事士免状取得後の一般用電気工作物の工事
- 認定電気工事従事者証取得後の簡易電気工事
- 電気事業用電気工作物の工事
- 主任技術者免状取得者で、認定により免状交付を申請する場合の電気工作物の維持・管理・運用業務
※新築や改修に伴う、設備への盤・照明器具・接地極等の取付や低圧高圧幹線の布設等。
※簡易電気工事とは、600V以下で使用する500kw未満の自家用電気工作物のことをいいます。
それぞれの試験を合格した場合や免状を取得した場合に分類すると、以下のようになります。
- 第一種電気工事士試験合格の場合
- 電気工作物に該当する電気的設備を設置し、または変更する工事
- 経済産業大臣が指定する養成機関において、教員として担当する実習
- 電気主任技術者免状取得者の場合
- 電気工作物の工事、維持または運用に関する保安の監督
- 自ら行う電気工作物の工事、維持または運用
- 高圧電気工事技術者試験合格者の場合
- 電気工作物に該当する電気的設備を設置し、または変更する工事
- 経済産業大臣が指定する養成機関において、教員として担当する実習
※ 自ら施工する当該工事に伴う設計および検査を含みます。
※ キュービクル、変圧器等の据付けに伴う土木工事および電気機器の製造は除きます。
※ ただし、実務経験は免状交付日以降に限られます。
※ 自ら施工する当該工事に伴う設計および検査を含みます。
※ キュービクル、変圧器等の据付けに伴う土木工事および電気機器の製造を除きます。
※ ただし、実務経験は試験合格通知日以降に限られます。
4.実務経験としては認められない電気工事
次の工事は実務経験として認められません。
- 軽微な工事(電気工事士法施行令第1条)
- 軽微な作業(電気工事士法施行規則第2条)
- 最大電力500kW未満の需要設備を設置する特殊電気工事
- ネオン工事
- 非常用予備発電装置工事
- 電圧5万ボルト以上で使用する架空電線路の係る工事
- 保守通信設備に係る工事
- 工場での電気製品組立・修理
- 車両・搬器・船舶・自動車の電気工事(令1条に定める電気工作物から除かれる工作物の工事)
- 電圧30V未満の電気工作物に係る工事
- 法令違反の工事
- 第二種電気工事士免状交付日前に行った一般用電気工事
- 平成2年9月1日以降の最大電力500kW 未満の自家用電気工事
- 電気工事業者としての登録または建設業許可を受けずに行った電気工事業に係る一般用電気工事
- 最大電力500kW 以上の自家用電気工事のうち、電気主任技術者免状の交付を受けていない者が電気主任技術者の監督を受けずに行った工事
- 第二種または第三種電気主任技術者が、電気事業法施行規則第56条の上限電圧を超えた電気工作物について行った保安の監督および工事
※ ただし、認定電気工事従事者認定証の交付を受けて行った電線路以外の 600V 以下の工事を除きます。
※ 電気工事士が、家庭用電気製品の販売に付随する工事については例外があります。
※ 自らが電気主任技術者に選任されている場合です。
電気工事士法に定められた軽微な工事とは?
電気工事士法施行令第1条で定める軽微な工事とは、以下の通りです。
- 電圧600ボルト以下で使用する差込み接続器、ねじ込み接続器、ソケット、ローゼットその他の接続器または電圧 600ボルト以下で使用するナイフスイッチ、カットアウトスイッチ、スナップスイッチその他の開閉器にコードまたはキャブタイヤケーブルを接続する工事
- 電圧600ボルト以下で使用する電気機器(配線器具を除く。以下同じ。)または電圧600ボルト以下で使用する蓄電池の端子に電線(コード、キャブタイヤケーブルおよびケーブルを含む。)をねじ止めする工事
- 電圧600ボルト以下で使用する電力量計もしくは電流制限器またはヒューズを取り付け、または取り外す工事
- 電鈴、インターホーン、火災感知器、豆電球その他これらに類する施設に使用する小型変圧器(二次電圧が36ボルト以下のものに限る。)の二次側の配線工事
- 電線を支持する柱、腕木その他これらに類する工作物を設置し、または変更する工事
- 地中電線用の暗渠または管を設置し、または変更する工事
上記のような軽微な工事は、実務経験とは認められないので注意が必要です。
電気工事士法に定められた軽微な作業とは?
- 電気工事士法施行規則第2条で定める自家用電気工作物の軽微な作業は以下の通りです。
- 電線相互を接続する作業
- がいしに電線を取り付ける作業
- 電線を直接造営材その他の物件(がいしを除く。)に取り付ける作業
- 電線管、線樋、ダクトその他これらに類する物に電線を収める作業
- 配線器具を造営材その他の物件に固定し、またはこれに電線を接続する作業
- 電線管を曲げ、もしくはねじ切りし、または電線管相互もしくは電線管とボックスその他の附属品とを接続する作業
- ボックスを造営材その他の物件に取り付ける作業
- 電線、電線管、線樋、ダクトその他これらに類する物が造営材を貫通する部分に防護装置を取り付ける作業
- 金属製の電線管、線樋、ダクトその他これらに類する物またはこれらの附属品を、建造物のメタルラス張り、ワイヤラス張りまたは金属板張りの部分に取り付ける作業
- 配電盤を造営材に取り付ける作業
- 接地線を自家用電気工作物に取り付け、接地線相互もしくは接地線と接地極とを接続し、または接地極を地面に埋設する作業
- 電圧600ボルトを越えて使用する電気機器に電線を接続する作業
- 第一種電気工事士が従事する上記1~12までに掲げる作業を補助する作業
- 電気工事士法施行規則第2条で定める一般用電気工作物の軽微な作業は以下の通りです。
- 上記軽微な作業1のa~jまでおよびlに掲げる作業
- 接地線を一般用電気工作物に取り付け、接地線相互もしくは接地線と接地極とを接続し、または接地極を地面に埋設する作業
- 電気工事士が従事する上記軽微な作業1のaおよびbに掲げる作業を補助する作業
※ 露出型点滅器または露出型コンセントを取り替える作業を除きます。
上記のような軽微な作業も、実務経験とは認められないので注意が必要です。