建設業法令遵守ガイドライン-元請負人と下請負人の関係に係る留意点-
6.やり直し工事
- やり直し工事を下請負人に依頼する場合は、やり直し工事が下請負人の責めに帰すべき場合を除き、その費用は元請負人が負担することが必要
- 下請負人の責めに帰さないやり直し工事を下請負人に依頼する場合は、契約変更が必要
- 下請負人の一方的な費用負担は建設業法に違反するおそれ
- 下請負人の責めに帰すべき理由がある場合とは、下請負人の施工が契約書面に明示された内容と異なる場合又は下請負人の施工に瑕疵等がある場合
- 下請負人から施工内容等を明確にするよう求めがあったにもかかわらず、元請負人が正当な理由なく施工内容等を明確にせず、下請負人に継続して作業を行わせ、その後、下請工事の内容が契約内容と異なるとする場合
- 施工内容について下請負人が確認を求め、元請負人が了承した内容に基づき下請負人が施工したにもかかわらず、下請工事の内容が契約内容と異なるとする場合
元請負人は下請工事の施工に関し下請負人と十分な協議を行い、また、明確な施工指示を行うなど、下請工事のやり直し(手戻り)が発生しない施工に努めることはもちろんであるが、やむを得ず、下請工事の施工後に元請負人が下請負人に対して工事のやり直しを依頼する場合には、やり直し工事が下請負人の責めに帰すべき理由がある場合を除き、当該やり直し工事に必要な費用は元請負人が負担しなければなりません。
下請負人の責めに帰すべき理由がないのに、下請工事の施工後に、元請負人が下請負人に対して工事のやり直しを依頼する場合にあっては、元請負人は速やかに当該工事に必要となる費用について元請下請間で十分に協議した上で、契約変更を行う必要があります。
元請負人が、このような契約変更を行わず当該やり直し工事を下請負人に施工させた場合には、建設業法第19条第2項に違反します。
下請負人の責めに帰すべき理由がないのに、その費用を一方的に下請負人に負担させるやり直し工事によって、下請代金の額が当初契約工事およびやり直し工事を施工するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがあります。
また、上記建設業法第19条第2項および第19条の3に違反しない場合であっても、やり直し工事により元請負人が下請負人の利益を不当に害した場合には、その情状によっては、建設業法第28条第1項第2号の請負契約に関する不誠実な行為に該当するおそれがあります。
下請負人の責めに帰すべき理由があるとして、元請負人が費用を全く負担することなく、下請負人に対して工事のやり直しを求めることができるのは、下請負人の施工が契約書面に明示された内容と異なる場合または下請負人の施工に瑕疵等がある場合に限られます。
なお、以下の場合には、元請負人が費用の全額を負担することなく、下請負人の施工が契約書面と異なることまたは瑕疵等があることを理由としてやり直しを要請することは認められません。
建設業法上違反となるおそれがある行為事例
元請負人が、元請負人と下請負人の責任および費用負担を明確にしないままやり直し工事を下請負人に行わせ、その費用を一方的に下請負人に負担させた場合
上記のケースは、建設業法第19条第2項、第19条の3に違反するおそれがあるほか、同法第28条第1項第2号に該当するおそれがあります。