建設業法令遵守ガイドライン-元請負人と下請負人の関係に係る留意点-
12.関係法令 ②社会保険・労働保険について
社会保険や労働保険は労働者が安心して働くために必要な制度です。
このため、社会保険、労働保険は強制加入の方式がとられています。
健康保険と厚生年金保険については、法人の場合にはすべての事業所について、個人経営の場合でも常時5人以上の従業員を使用する限り、必ず加入手続を行わなければなりません。
また、雇用保険については建設事業主の場合、個人経営か法人かにかかわらず、労働者を1人でも雇用する限り、必ず加入手続をとらなければなりません。
これらの保険料は、建設業者が義務的に負担しなければならない法定福利費であり、建設業法第19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるものとされています。
このため、元請負人および下請負人は見積時から法定福利費を必要経費として適正に確保する必要があります。
下請負人は、見積書に法定福利費相当額を明示すべきであり、下請負人の見積書に法定福利費相当額が明示されているにもかかわらず、元請負人がこれを尊重せず、法定福利費相当額を一方的に削減したり、法定福利費相当額を含めない金額で建設工事の請負契約を締結し、その結果「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがあります。
また、社会保険・労働保険への加入は法律で義務づけられているので、保険未加入業者は、その情状によっては、建設業法第28条第1項第3号の「その業務に関し他の法令に違反し、建設業者として不適当」に該当するおそれがあります。