建設業法令遵守ガイドライン-元請負人と下請負人の関係に係る留意点-
12.関係法令 ③労働災害防止対策について
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)は、建設工事現場において、元請負人および下請負人に対して、それぞれの立場に応じて、労働災害防止対策を講ずることを義務づけています。
したがって、当該対策に要する経費は、元請負人および下請負人が義務的に負担しなければならない費用であり、建設業法第19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるものとされています。
元請負人は、建設工事現場における労働災害防止対策を適切に実施するため、「1.見積条件の提示」並びに「元方事業者による建設現場安全管理指針」(以下「元方安全管理指針」という。)3および14を踏まえ、見積条件の提示の際、労働災害防止対策の実施者およびそれに要する経費の負担者の区分を明確にすることにより、下請負人が、自ら実施しなければならない労働災害防止対策を把握できるとともに、自ら負担しなければならない経費を適正に見積ることができるようにしなければなりません。
下請負人は、元請負人から提示された労働災害防止対策の実施者およびそれに要する経費の負担者の区分をもとに、自ら負担しなければならない労働災害防止対策に要する経費を適正に見積り、元請負人に提出する見積書に明示すべきであるとされています。
元請負人は、下請負人から提出された労働災害防止対策に要する経費が明示された見積書を尊重しつつ、建設業法第18条を踏まえ、対等な立場で下請負人との契約交渉をしなければなりません。
また、元請負人および下請負人は、「2.書面による契約締結」並びに「元方安全管理指針」3および14を踏まえ、契約書面の施工条件等に、労働災害防止対策の実施およびそれに要する経費の負担者の区分を記載し明確にするとともに、下請負人が負担しなければならない労働災害防止対策に要する経費のうち、施工上必要な経費と切り離し難いものを除き、労働災害防止対策を講ずるためのみに要する経費については、契約書面の内訳書などに明示することが必要です。
なお、下請負人の見積書に適正な労働災害防止対策に要する経費が明示されているにもかかわらず、元請負人がこれを尊重せず、当該経費相当額を一方的に削減したり、当該経費相当額を含めない金額で建設工事の請負契約を締結し、その結果「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがあります。