建設業法令遵守ガイドライン-元請負人と下請負人の関係に係る留意点-
2.書面による契約締結 ②追加工事等に伴う追加・変更契約
- 追加工事等の着工前に書面による契約変更が必要
- 追加工事等の内容が直ちに確定できない場合の対応
- 下請負人に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容
- 当該追加工事等が契約変更の対象となることおよび契約変更等を行う時期
- 追加工事等に係る契約単価の額
- 元請負人が合理的な理由なく下請工事の契約変更を行わない場合は建設業法に違反
- 追加工事等の費用を下請負人に負担させることは、建設業法第19条の3に違反するおそれ
請負契約の当事者である元請負人と下請負人は、追加工事等の発生により請負契約の内容で当初の請負契約書に掲げる事項を変更するときは、建設業法第19条第2項により、当初契約を締結した際と同様に、追加工事等の着工前にその変更の内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければなりません。
これは、当初契約書において契約内容を明定しても、その後の変更契約が口約束で行われれば、当該変更契約の明確性および正確性が担保されず、紛争を防止する観点からも望ましくないためであり、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として追加工事等の着工前に契約変更を行うことが必要です。
元請負人および下請負人が追加工事等に関する協議を円滑に行えるように、下請工事の当初契約において、建設業法第19条第1項第5号に掲げる事項(当事者の一方から設計変更等の申し出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更または損害の負担およびそれらの額の算定方法に関する定め)について、できる限り具体的に定めておくことが望ましいとされています。
工事状況により追加工事等の全体数量等の内容がその着工前の時点では確定できない等の理由により、追加工事等の依頼に際して、その都度追加・変更契約を締結することが不合理な場合は、元請負人は、以下の事項を記載した書面を追加工事等の着工前に下請負人と取り交わすこととし、契約変更等の手続については、追加工事等の全体数量等の内容が確定した時点で遅滞なく行うものとされています。
追加工事等が発生しているにもかかわらず、例えば、元請負人が発注者との間で追加・変更契約を締結していないことを理由として、下請負人からの追加・変更契約の申出に応じない行為等、元請負人が合理的な理由もなく一方的に変更契約を行わない行為については、建設業法第19条第2項に違反することになります。
追加工事等を下請負人の負担により施工させたことにより、下請代金の額が当初契約工事および追加工事等を施工するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがあります。
建設業法上違反となる行為事例
建設業法上違反となる行為とは以下のようなものがあります。
- 下請工事に関し追加工事または変更工事(以下、追加工事等。)が発生したが、元請負人が書面による変更契約を行わなかった場合
- 下請工事に係る追加工事等について、工事に着手した後または工事が終了した後に書面により契約変更を行った場合
- 下請負人に対してが、発注者との契約変更手続が未了であることを理由として、下請契約の変更に応じなかった場合
- 下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、下請工事の工期が当初契約の工期より短くなり、残された工期内に工事を完了させるため労働者の増員等が必要となった場合に、下請負人との協議にも応じず、元請負人の一方的な都合により変更の契約締結を行わなかった場合
- 納期が数ヶ月先の契約を締結し、既に契約金額が確定しているにもかかわらず、実際の納入時期における資材価格の下落を踏まえ、下請負人と変更契約を締結することなく、元請負人の一方的な都合により、取り決めた代金を減額した場合
上記1~5のケースは、いずれも建設業法第19条第2項に違反するほか、1~4のケースは必要な増額を行わなかった場合、5のケースは契約どおりの履行を行わなかった場合には、同法第19条の3に違反するおそれがあります。
2.書面による契約締結 ③工期変更に伴う変更契約
- 工期変更にかかる工事の着工前に書面による契約変更が必要
- 工事に着手した後に工期が変更になった場合、追加工事等の内容および変更後の工期が直ちに確定できない場合の対応
- 下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず工期が変更になり、これに起因して下請工事の費用が増加したが、元請負人が下請工事の変更を行わない場合は建設業法違反
- 下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず工期が変更になり、これに起因して下請工事の費用が増加した場合に、費用の増加分について下請負人に負担させることは、建設業法第19条の3に違反するおそれ
- 追加工事等の発生に起因する工期変更の場合の対応
請負契約の当事者である元請負人と下請負人は、工期変更により請負契約で当初の請負契約書に掲げる事項を変更するときは、建設業法第19条第2項により、当初契約を締結した際と同様に工期変更にかかる工事の着工前にその変更の内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければなりません。
元請負人および下請負人が工期変更に関する協議を円滑に行えるよう、下請工事の当初契約において、建設業法第19条第1項第5号に掲げる事項(当事者の一方から工事着手の延期等の申し出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更または損害の負担およびそれらの額の算定方法に関する定め)について、できる限り具体的に定めておくことが望ましいとされています。
下請工事に着手した後に工期が変更になった場合は、契約変更等の手続きについては、変更後の工期が確定した時点で遅滞なく行うものとされています。
工期を変更する必要があると認めるに至ったが、変更後の工期の確定が直ちにできない場合には、工期の変更が契約変更等の対象となることおよび契約変更等を行う時期を記載した書面を、工期を変更する必要があると認めた時点で下請負人と取り交わすこととし、契約変更等の手続については、変更後の工期が確定した時点で遅滞なく行うものとされています。
下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず工期が変更になり、これに起因して下請工事の費用が増加したにもかかわらず、例えば、元請負人が発注者から増額変更が認められないことを理由として、下請負人からの契約変更の申し出に応じない行為等、必要な変更契約を行わない行為については、建設業法第19条第2項に違反することになります。
下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず工期が変更になり、これに起因して下請工事の費用が増加した場合に、費用の増加分について下請負人に負担させたことにより、下請代金の額が下請工事を施工するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがあります。
工事現場においては、工期の変更のみが行われる場合のほか、追加工事等の発生に起因して工期の変更が行われる場合が多いが、追加工事等の発生が伴う場合には、上記1~4のほか、追加工事等に伴う追加・変更契約に関する記述(上記2-②)が該当します。
建設業法上違反となる行為事例
- 下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、下請工事の当初契約で定めた工期が変更になり、下請工事の費用が増加したが、元請負人が下請負人からの協議に応じず、書面による変更契約を行わなかった場合
- 元請負人が下請負人に工事数量の追加を指示したことにより、下請負人が行う工事の工期に不足が生じているにもかかわらず、工期の延長について元請負人が下請負人からの協議に応じず、書面による変更契約を行わなかった場合
上記1・2のケースは、建設業法第19条第2項に違反するほか、必要な増額を行わなかった場合には同法第19条の3に違反するおそれがあります。