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建設業法令遵守ガイドライン②

2017/02/10


建設業法令遵守ガイドライン-元請負人と下請負人の関係に係る留意点-

2.書面による契約締結 ①当初契約

建設業法上違反となる行為事例とは?

  1. 契約は下請工事の着工前に書面により行うことが必要
  2. 建設工事の請負契約の当事者である元請負人と下請負人は、対等な立場で契約すべきであり、建設業法第19条第1項により定められた14の事項を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければならないこととなっています。

    契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として下請工事の着工前に行わなければならない。

    建設業法19条第1項において、建設工事の請負契約の当事者に、契約の締結に際して契約内容を書面に記載し相互に交付すべきことを求めているのは、請負契約の明確性および正確性を担保し、紛争の発生を防止するためです。

    また、あらかじめ契約の内容を書面により明確にしておくことは、いわゆる請負契約の「片務性」の改善に資することともなり、極めて重要な意義があるとされています。

  3. 契約書面には建設業法で定める一定の事項を記載することが必要
  4. 契約書面に記載しなければならない事項(以下、契約書面の記載事項)は、以下の14の事項です。

    1. 工事内容

      ※ 下請負人の責任施工範囲、施工条件等が具体的に記載されている必要があるので、○○工事一式といった曖昧な記載は避けなければなりません。

    2. 請負代金の額
    3. 工事着手の時期および工事完成の時期
    4. 請負代金の全部または一部の前金払もしくは出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期および支払方法
    5. 当事者の一方から設計変更または工事着手の延期、工事の全部もしくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更または損害の負担およびそれらの額の算定方法に関する定め
    6. 天災その他不可抗力による工期の変更または損害の負担およびその額の算定方法に関する定め
    7. 価格等の変動もしくは変更に基づく請負代金の額または工事内容の変更
    8. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
    9. 注文者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容および方法に関する定め
    10. 注文者が工事の全部または一部の完成を確認するための検査の時期および方法ならびに引渡しの時期
    11. 工事完成後における請負代金の支払の時期および支払方法
    12. 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結、その他の措置に関する定めをするときはその内容
    13. 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
    14. 契約に関する紛争の解決方法
  5. 注文書・請書による契約は一定の要件を満たすことが必要
  6. 建設工事の請負契約は、工事請負契約書ではなく、注文書・請書のセットによる請負契約も一定の要件を満たせば認められています。

    注文書・請書による請負契約を締結する場合は、以下に掲げる場合に応じた要件を満たさなければなりません。

    1. 当事者間で基本契約書を取り交わした上で、具体の取引については注文書および請書の交換による場合
      1. 基本契約書には、契約書面の記載事項の4~14までの事項(ただし、注文書および請書に個別に記載される事項を除く。)を記載し、当事者の署名または記名押印をして相互に交付すること。
      2. 注文書および請書には、契約書面の記載事項の1~3までの事項その他必要な事項を記載すること。
      3. 注文書および請書には、それぞれ注文書および請書に記載されている事項以外の事項については、基本契約書の定めによるべきことが明記されていること。
      4. 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名または記名押印すること。
    2. 注文書および請書の交換のみによる場合
      1. 注文書および請書のそれぞれに、同一の内容の契約約款を添付または印刷すること。
      2. 契約約款には、契約書面の記載事項4~14までの事項(ただし、注文書および請書に個別に記載される事項を除く。)を記載すること。
      3. 注文書または請書と契約約款が複数枚に及ぶ場合には、割印を押すこと。
      4. 注文書および請書の個別的記載欄には、契約書面の記載事項1~3までの事項その他必要な事項を記載すること。
      5. 注文書および請書の個別的記載欄には、それぞれの個別的記載欄に記載されている事項以外の事項については契約約款の定めによるべきことが明記されていること。
      6. 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名または記名押印すること。
  7. 電子契約によることも可能
  8. 書面契約に代えて、CI-NET等による電子契約も認められるています。その場合でも契約書面の記載事項の1~14の事項を記載しなければなりません。

  9. 建設工事標準下請契約約款またはこれに準拠した内容を持つ契約書による契約が基本
  10. 建設業法第18条では、「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない」と規定されています。

    建設工事の下請契約の締結に当たっては、同条の趣旨を踏まえ、建設工事標準下請契約約款またはこれに準拠した内容を持つ契約書による契約を締結することが基本となっています。

  11. 片務的な内容による契約は、建設業法上不適当
  12. 元請負人と下請負人の双方の義務であるべきところを下請負人に一方的に義務を課すものや、元請負人の裁量の範囲が大きく、下請負人に過大な負担を課す内容など、建設工事標準下請契約約款に比べて片務的な内容による契約については、結果として建設業法第19条の3により禁止される不当に低い請負代金につながる可能性が高い契約となるので、適当ではないとされています。

    また、発注者と元請負人の関係において、例えば、発注者が契約変更に応じないことを理由として、下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、下請負人に追加工事等の費用を負担させることは、元請負人としての責任を果たしているとはいえず、元請負人は発注者に対して発注者が契約変更等、適切な対応をとるよう働きかけを行うことが望ましいとされています。

  13. 一定規模以上の解体工事等の場合は、契約書面にさらに追加事項の記載が必要
  14. 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(以下、建設リサイクル法。)第13条では、一定規模*1 以上の解体工事等に係る下請契約を行う場合に、以下の4事項を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければならないこととなっています。

    そのような工事に係る契約書面は、契約書面の記載事項の全14事項に加え、以下の4事項の記載が必要となります。

    1. 分別解体等の方法
    2. 解体工事に要する費用
    3. 再資源化等をするための施設の名称および所在地
    4. 再資源化等に要する費用

*1 一定規模以上の解体工事とは、次のそれぞれの規模をいいます。

  1. 建築物に係る解体工事の対象である当該建築物(当該解体工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が80平方メートル以上の工事
  2. 建築物に係る新築または増築の工事の対象である当該建築物(増築の工事にあっては、当該工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が500平方メートル以上の工事
  3. 建築物に係る新築工事等(上記bを除く)の請負代金の額が1億円以上の工事
  4. 建築物以外のものに係る解体工事または新築工事等の請負代金の額が500万円以上の工事

※ 解体工事または新築工事等を2以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを1の契約で請け負ったものとみなして、前項に規定する基準を適用する。

ただし、正当な理由に基づいて契約を分割したときはこの限りでない。

建設業法上違反となる行為事例

建設業法上違反となる行為とは、以下のような事例をいいます。

  1. 下請工事に関し、書面による契約を行わなかった場合
  2. 下請工事に関し、建設業法第19条第1項の必要記載事項を満たさない契約書面を交付した場合
  3. 元請負人からの指示に従い下請負人が書面による請負契約の締結前に工事に着手し、工事の施工途中または工事終了後に契約書面を相互に交付した場合
  4. 下請工事に関し、基本契約書を取り交わさない、あるいは契約約款を添付せずに、注文書と請書のみ(またはいずれか一方のみ)で契約を締結した場合

上記1から4のケースは、いずれも建設業法第19条第1項に違反することになります。

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